盗難

   盗難

 まず肝に銘じてほしいのは、日本ほど治安の良い国は無いということである。たとえは席を取るために荷物を数秒間席に置いたままにする、とどうなるかと言えば、必ず荷物は消えて無くなる。これはインドでもアメリカでもヨーロッパでも同じである。

 インドは貧しい人が生きるために豊かな人から施しを受ける習慣(バックシーシー)がある。泥棒もそうだとは言えないが、貧しい泥棒が多いため物は盗むが人に危害を与えたという話は私が駐在員をしていた時代は聞かなかった。アメリカのように刃物で人を脅して盗るようなことな無いと思うが、現在はアフガニスタンで日本人が殺害されたりしているので危険は増えていると思われる。

 ただやはりインドでは、目を離した隙に荷物を盗まれる場合がほとんどだ。街中の観光中やショッピングやレストランにおいても場所を選ばず盗難に合う。必ず荷物を身から離さない事。ホテルにカギをかけても安心できない。ホテルの使用人が盗む場合もあるし、同じホテルに泊まっている宿泊客が盗みをする場合もある。もし外出をする時は、身に付けられない貴重品はホテルのフロントのセーフティーボックスに預かってもらうのが一番安全である。サイフやパスポートなどは腹巻とまでは言わないが、とにかくしっかりと身に付けておくこと。

 特に列車で移動中はカバンを狙われやすい。両手で抱えてうとうとしていると、刃物でカバンを切られ貴重品が盗まれる事が多い。しかも盗った後は空いた隙間に詰め物をして気付かれないようにしたりしてあり、被害者に聞くとまるで手品の様だとの事である。

 街中で子供が荷物をひったくる場合がある。その時のために子供を追いかけて捕まえるだけの足腰を鍛えておこう?。それが無理なら荷物はしかりと身に付けひったくられないようにすること。

 その他の詐欺まがいの事は「ニューデリー」の「思い出 コンノートプレイス その2」を見てください。

   特殊な場合
 実話ですが、当社の女性旅行客が日本に帰るためカルカッタ飛行場に向かった時にタクシーに乗りました。途中の人気の無い道路で急にタクシーが止まってしまいました。運転手が車の調子が悪いので車を後ろから押してくれと言われたのです。
 彼女は何の疑いも無く手伝うつもりで体ひとつで車外に出て車を押しました。すると無事車はエンジンがかかりました。「良かった」と彼女は思ったところ、なんと車はそのまま彼女を置いたまま走り去ってしまったのです。あっけにとられて立ちすくむ彼女。すぐに止まってくれるだろうという彼女の思いを無視し彼女の全ての荷物を乗せたまま走り去るタクシー。ただ一人道路に置き去りにされた彼女。頭の中が真っ白になったそうです。
 ようやく後から来た車に訳を言って飛行場まで送ってもらったのですが、飛行機は出た後でした。飛行場のカウンターで訳を言って泣いている彼女。
 するとたまたま隣にいて訳を聞いたインドの青年が、彼女を連れて空港の警察に行き色々な手続をしてくれて、彼女を彼の自宅に客人として泊めてくれたのです。
 なんと彼はインド政府のエリート高官であり、「これはインドの羞じだ」ということで、ものすごく親切にしてしてくれたそうです。その彼の家はものすごーーい邸宅だったそうです。彼のご両親もすごく裕福な方で一家で彼女を親身に世話をしていただいたそうです。
 荷物は戻りませんでしたが、パスポートの再発行や航空券の再発行もしてもらい、無事日本に帰ることができました。
 彼女がTICに来てその話を聞いたとき私は笑ってしまいました。彼女にもとても良い経験だったと笑っていました。捨てる神あれば拾う神ありで、旅行というのはとてもおもしろいですね。彼女はまたカルカッタに行って彼に合いたいと言っていました。